大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和26年(さ)4号 判決 1952年12月11日

本籍並住居

福岡県山門郡大和村大字明野七七番地

農業兼漁業

武末司

昭和六年一一月二六日生

右に対する殺人被告事件について昭和二六年四月二四日福岡高等裁判所の言渡した確定判決に対し検事総長佐藤藤佐から非常上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原判決並びに第一審判決中被告人に対する部分を破棄する。

被告人を懲役五年以上六年以下に処する。

第一審における未決勾留日数中五〇日を右本刑に算入する。

第一審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

福岡地方裁判所久留米支部は昭和二六年一月一〇日被告人武末司は田島潜と共謀の上昭和二五年七月一五日午前一時半頃池末精市を殺害せんと決意し所携の仕込刀を以て同人の横腹及び腰部を突刺し因つて同人をして該刺傷に基く敗血症のため同月二四日午後一時頃死亡せしめて殺害の目的を遂げたものである旨の犯罪事実を認定し被告人を懲役六年に処する旨の判決を言渡し、被告人は即日福岡高等裁判所に控訴の申立を為したところ、同高等裁判所は被告人の控訴を棄却するとの判決を言渡し同判決は同二六年五月九日確定したものであることは記録上明らかなところである。ところが被告人は昭和六年一一月二六日生であること記録により明らかであるから、同二六年一月一〇日の本件第一審判決言渡の当時は未だ二〇歳に満たない者であるので同月一日から適用されることになつた改正少年法二条の規定によつて少年であり(同法附則六八条)従つて同法五二条の適用を受ける筋合であるといわなければならぬ。されば本件において第一審裁判所は同条を適用して短期は五年、長期は一〇年を越えることができない不定期の懲役刑を科すべきものであること多言を要しないところであるから、不定期刑を科せず且つ短期の限度五年を超えて懲役六年の定期刑を科した第一審判決は明らかに違法であつて、これを是認した原判決また違法といわなければならぬ。されば本件非常上告は結局その理由がある。よつて、刑訴四五八条一号但書により原判決並びに第一審判決を破棄し被告事件につき判決をするに、被告人の所為は刑法一九九条に該当するから所定刑中有期懲役刑を選択し、被告人は第一審判決及び原判決当時少年であつたから、少年法五二条により被告人を五年以上六年以下の懲役刑に処し、刑法二一条により第一審における未決勾留日数中五〇日を本刑に算入し、第一審における訴訟費用は刑訴一八一条により被告人の負担たるべきものとする。

よつて裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

検察官 橋本乾三関与

(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判長裁判官沢田竹治郎は退官につき署名押印することができない。裁判長裁判官 真野毅)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例